一切の生類にたいし、棒(武器)を置いて、彼らのなかの唯の一者でさえも害さずにいる者は、〔もはや〕子を求めぬもの。どうして、道友を〔求めよう〕。犀の角のように、独り、歩むがよい。(1)
交流が生じた者には、諸々の愛執〔の思い〕が有る。愛執〔の思い〕に従い、この苦しみは発生する。愛執〔の思い〕から生じる〔この〕危険(患・過患)を〔常に〕見ている者となり、犀の角のように、独り、歩むがよい。(2)
朋友たちや知人たちを慈しみながら(情をかけつつ)、〔その思いに〕心が縛られた者は、〔自他の〕義(利益)を失う。この恐怖を、親愛〔の情〕のうちに〔常に〕見ている者となり、犀の角のように、独り、歩むがよい。(3)
あたかも、〔枝や根が〕広く絡みついた竹のように、子たちにたいし、さらに、妻たちにたいし、〔まさに〕その、期待〔の思い〕がある。〔まとわりつくものが何もない〕竹の子のように、〔何にたいしても〕執着せずにいる者となり、犀の角のように、独り、歩むがよい。(4)
たとえば、縛られていない〔野生の〕鹿が、林のなか、求めるままに餌場へと赴くように、識者たる人は、独存〔の境地〕を〔常に〕見ている者となり、犀の角のように、独り、歩むがよい。(5)
道友たちの中にあるなら、〔余計な〕相談事が有る⸺住居において、立所において、出行において、遊行において。〔愚者の〕貪り求めるところならざる独存〔の境地〕を〔常に〕見ている者となり、犀の角のように、独り、歩むがよい。(6)
道友たちの中にあるなら、遊興と歓楽が有る。そして、子たちにたいしては、広大なる愛情が有る。愛しいものとの別離〔の苦しみ〕を忌避している者となり、犀の角のように、独り、歩むがよい。(7)
四方〔に慈しみの思い〕ある者は、そして、〔一切に〕敵対なき者と成る。いかなるものによっても満足している者となり、諸々の危難を打ち負かす驚愕なき者となり、犀の角のように、独り、歩むがよい。(8)
出家者たちでさえも、或る者たちは救い難く、さらに、家に居住している在家の者たちも〔救い難い〕。他者の子たちにたいする思い入れ少なき者と成って、犀の角のように、独り、歩むがよい。(9)
あたかも、落葉した黒檀のように、諸々の在家の特徴を取り去って、勇者は、諸々の在家の結縛を断ち切って、犀の角のように、独り、歩むがよい。(10)
それで、もし、賢明なる道友を得るなら、共に歩む善き住者たる慧者を〔得るなら〕、一切の危難を征服して、わが意を得た者となり、気づき(念)ある者として、彼とともに、歩むがよい。(11)
もし、賢明なる道友を得ないなら、共に歩む善き住者たる慧者を〔得ないなら〕、征圧した国土を捨棄して〔出家する〕王のように、林のなかのマータンガ象のように、独り、歩むがよい。(12)
たしかに、〔わたしたちは〕道友の成就(獲得)を賞賛する。最勝の者たちであるなら、同等の者たちであるなら、道友として慣れ親しむべきである。これらの者たちを得ずしては、罪過なき〔施物〕を受益する者となり、犀の角のように、独り、歩むがよい。(13)
細工師の子が見事に仕立てた、金の光り輝く〔二つの腕輪〕を見て、〔まさに、その〕二つ〔の腕輪〕が、腕にあって相打っているのを〔見て〕、犀の角のように、独り、歩むがよい。(14)
このように、伴侶(連れの者)と共にあるなら、わたしには、虚論の言葉が、あるいは、執着が、存するであろう。この恐怖を、未来に見ている者となり、犀の角のように、独り、歩むがよい。(15)
まさに、諸々の欲望〔の対象〕は様々で、〔蜜のように〕甘美で、意が喜びとするものである。種々様々な形態(色)で、〔人の〕心を掻き乱す。〔この〕危険を、諸々の欲望の属性(妙欲:色・声・香・味・触)のうちに見て、犀の角のように、独り、歩むがよい。(16)
これは、わたしにとって、かつまた、疾患であり、かつまた、腫物であり、かつまた、禍であり、かつまた、病であり、かつまた、矢であり、かつまた、恐怖である。この恐怖を、諸々の欲望の属性のうちに見て、犀の角のように、独り、歩むがよい。(17)
そして、寒さを、さらに、暑さを、飢えを、渇きを、諸々の風と熱を、かつまた、諸々の虻と蛇を⸺これらを、一切もろともに征服して、犀の角のように、独り、歩むがよい。(18)
肩が立派に生育した、蓮華〔の紋〕ある、巨大な象のように、諸々の群れを避けて、林のなかで喜びのままに住んでいる者となり、犀の角のように、独り、歩むがよい。(19)
〔他者との〕社交を喜ぶ者には、すなわち、〔彼が〕暫時の解脱に触れるであろう、その状況は〔見出され〕ない。太陽の眷属(ブッダ)の言葉をこころして聞いて、犀の角のように、独り、歩むがよい。(20)
諸々の見解の狂騒を超克し、〔正道の〕決定に至り得た、道の獲得者(預流道の成就者)となり、「〔わたしは〕知恵(智)が生起した者として〔世に〕存している。他によって導かれることはない」〔と〕、犀の角のように、独り、歩むがよい。(21)
妄動なく、虚言なく、涸渇なく、偽装なく、汚濁と迷妄を取り払い、一切の世にたいし依存なき者と成って、犀の角のように、独り、歩むがよい。(22)
悪しき道友を、義(道理)ならざるものを見る者を、〔世の〕不正に〔思いが〕固着した者を、遍く避けるがよい。〔欲望の対象を〕追い求める者とは、〔気づきを〕怠る者とは、自ら、慣れ親しまぬがよい。犀の角のように、独り、歩むがよい。(23)
多聞にして法(教え)を保つ者と、秀逸にして即応即答〔の智慧〕ある朋友と、親しくするがよい。諸々の義(利益)を了知して、疑いを取り除くがよい。犀の角のように、独り、歩むがよい。(24)
世における、遊興と歓楽を、さらに、欲望の安楽を、十分ならずと為して、〔何も〕期待せずにいる者となり、飾り立ての境位から離れた、真理を説く者となり、犀の角のように、独り、歩むがよい。(25)
そして、子と妻、さらに、父と母、諸々の財産、諸々の穀物、かつまた、諸々の眷属⸺限りあるかぎりの諸々の欲望〔の対象〕を捨棄して、犀の角のように、独り、歩むがよい。(26)
「これは、執着〔の対象〕である。ここにおいて、福楽は小さく、悦楽は少なく、ここにおいて、苦痛は、より一層のものである。これは、〔人を誘惑する〕釣針である」と知って、思慧ある者となり、犀の角のように、独り、歩むがよい。(27)
水のなかの魚が網を破って〔解き放たれる〕ように、諸々の束縛するもの(結)を引き裂いて、炎が焼け跡に引き返さないように、犀の角のように、独り、歩むがよい。(28)
〔生類を殺さぬように注意深く〕眼を落とし、かつまた、足の妄動ある者(欲望の対象を求めて歩き回る者)ではなく、〔感官の〕機能(根)を守り、意を守護し、〔煩悩が〕漏れ出ず、〔貪欲の炎に〕焼かれず、犀の角のように、独り、歩むがよい。(29)
諸々の在家の特徴を取り払って、あたかも、葉に等しく覆われたパーリチャッタ〔樹〕のように、黄褐色の衣(袈裟)をまとい、〔家から〕出て、犀の角のように、独り、歩むがよい。(30)
諸々の味(味覚の喜び)にたいし、貪求を為すことなく、〔欲の〕妄動なき者となり、他者を扶養する〔義務〕なく、〔行乞のために〕歩々淡々と歩み、家々に心が縛られない者となり、犀の角のように、独り、歩むがよい。(31)
心の〔有する〕五つの〔修行の〕妨害(五蓋:欲の思い・憎悪の思い・心の沈滞と眠気・心の高揚と悔恨・疑惑の思い)を捨棄して、一切の付随する〔心の〕汚れ(随煩悩)を除き去って、依存なき者となり、愛執と憤怒を断ち切って、犀の角のように、独り、歩むがよい。(32)
そして、楽と苦〔の両者〕に背を向けて、さらに、まさしく、過去における、悦意と失意〔の両者〕に〔背を向けて〕、放捨(捨:選択せず差別なき心)と止寂(奢摩他・止:専一不動の心)の清浄なる〔境地〕を得て、犀の角のように、独り、歩むがよい。(33)
最高の義(勝義:涅槃)に至り得るために、精進に励み、畏縮した心なく、怠惰な生活なく、断固たる勤勉〔努力〕ある者となり、強靭と活力を具有した者となり、犀の角のように、独り、歩むがよい。(34)
静坐と瞑想(禅・静慮:禅定の境地)を遠ざけずにいる者となり、諸々の法(教え)について常に法(教え)のままに行なう者となり、諸々の生存のうちに危険を触知する者となり(苦しみの生をあるがままに知り見る者となり)、犀の角のように、独り、歩むがよい。(35)
〔気づきを〕怠らず〔常に〕渇愛の滅尽を望み求めている者となり、聾唖ならざる聞ある気づきの者となり、法(真理)を究め〔正道を〕決定した〔刻苦〕精励の者となり、犀の角のように、独り、歩むがよい。(36)
諸々の音に動じない獅子のように、〔鳥捕りの〕網に着さない風のように、〔泥〕水に汚されない蓮華のように、犀の角のように、独り、歩むがよい。(37)
たとえば、牙の力ある獅子が、〔敵を〕打ち負かして、獣たちの王となり、〔一切を〕征服して歩むように、諸々の辺地の臥坐所に慣れ親しみ、犀の角のように、独り、歩むがよい。(38)
慈愛〔の心〕(慈)を、放捨〔の心〕(捨)を、慈悲〔の心〕(悲)を、さらに、歓喜〔の心〕(喜)を、〔これらの四つの無量なる心による〕解脱を、〔正しい〕時に〔常に〕習修しながら、一切の世〔の人々〕に遮られずにいる者となり、犀の角のように、独り、歩むがよい。(39)
そして、貪欲(貪)を、かつまた、憤怒(瞋)を、迷妄(痴)を捨棄して、諸々の束縛するもの(結)を引き裂いて、生命の消滅に動じずにいる者となり、犀の角のように、独り、歩むがよい。(40)
〔人々は〕義(利益)を動機として、〔他者と〕親しくし、かつまた、慣れ親しむ。今日、動機なき〔真の〕朋友たちは、得難きもの。自己を義(利益)とする智慧(自己本位の断片的知識)ある人間たちは、不浄である。犀の角のように、独り、歩むがよい。ということで⸺(41)
犀の角の経が第三となり、〔以上で〕終了となる。
注釈【1】
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